石松の最後(清水次朗長伝)

石松の最後

お民が都鳥一家に訊く。
このいいお天気に、どうしてあなた方十人は、びっちょり濡れているんでしょうね。
嫌なことを聞きやがる。閻魔堂の前で石松を斬ったら、石が用水掘りを飛び越えて逃げた。あとから十人が追いかけたが、身体と身体がぶつかり合って、堀の中へ落っこちたんだ。
あら、たったひとりの石さんを斬るために、十人が堀へ落ちたんですか。まぁお強いこと。こんな強い人とは思わなかった。まぁ怖い。早く帰って頂戴よ。あれぇ〜。
覚えてろよ、畜生。

家の周りに誰もいなくなったのを確かめて、石松を押入れから出した。
石、これからどうするんだ?
浜松にいい医者があるから、そこで身体を治してもらってから、この仇討ちをするつもりだ。
よし、俺が一緒に行こう。
いや、送ってもらったなんていったら清水一家の名前に傷が付くから、一人で行くよ。

止めるのも聞かず、一人で歩き出す石松。
見送りの二人が見えなくなると、傷の痛みでばったり倒れる。
こんなに斬られて痛くないわけがない。困ったな。
立ち木の枝を切り落として杖にすると、また歩き始めて閻魔堂の前。

閻魔堂にどっかりと腰をおろしていると、石松を探している十人が集まってきた。
閻魔堂の後ろへ廻って隠れていると十人が
どこにもいねえ。逃げ足の速い野郎だ。なんでえ、森の石松は強い強いというが、逃げるなんて卑怯な奴だ。
これを聞いて石松怒った。
脇差のくり方握って、ずっと出てきた。
やい、こちとら逃げたんじゃねえ。手前たちを待ってたんだ。

石松を見て逃げ出そうとした十人を追いかける石松。
大きな石に躓いて転んだ。
傷の痛さ、起き上がれない。
とって返した十人が、石松をズタズタに斬った。

翌朝、五、六人が話をしながら七五朗の家の前を通る。
閻魔堂の前で誰か殺されている。嫌だなぁ、博奕打ちは。あんな死に方するからなぁ。
それを聞いた七五朗が駆けつけてみると石松。
手前の敵は俺が討つぞ。

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