大野の宿場(清水次朗長伝)

大野の宿場

次朗長、大政、小政、大瀬の半五郎、増川仙右ヱ門、奇妙院常之助、法印大五朗、森の石松の八人が尾張の知多郡亀崎へ入った。
大野屋という、なにやら薄暗い宿屋へ腹ごしらえに入ると、奉公人も誰もいなくて六十五、六の爺さんが一人。
ご馳走を出して次朗長の顔を見てびっくり。
わっしはあんたの子分、大野の鶴吉の親父、鶴右ヱ門です。
おう、鶴吉が見えねえが元気でいるかい?
はい、それについて……。

ある日、土地の若い衆が六人ばかり、二階を貸してくれというから貸してやると、博奕を始めた。
いやだなと思ったが、土地の者だ、堅気の人だ、大きなことじゃないだろうと知らないふりをしていた。
そこへ保下田の久六の子分がやってきて、場銭をすっかり浚(さら)った上に、代官所へ引っ張って行こうとした。
そこへ鶴吉が帰ってきて、場銭を浚ったんだから身体は勘弁してやってくんねえと言ったら、手前は次朗長の子分だってな、次朗長一家と聞いたら生かしちゃおかねえって鶴吉の頭を殴った。
この野郎って久六の子分二人を無茶苦茶引っ叩いて追い返したら、代官所からお役人が五、六人来て、鶴吉は連れていかれた。
堅気のお方はみんな帰ってきましたが、鶴吉だけが帰らねえ。飯も食わずに牢内にいるという話だ。

親父さんから代官所と代官屋敷について詳しく聞いた。
役人が忘れていった御用提灯があるので、それを持っていけば門が開く。
支度ができて、いよいよ代官所へ乗り込み。

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