閻魔堂の騙し討ち
七五朗に家に来るよう誘われるが、石松は尻ごみしている。
俺は口不調法だから、お前の今度のかみさんに挨拶ができねえ。
なんだい、今度のかみさんてえのは。俺は嬶は一人っか持ったこたあねえぞ。お前も知ってる幼馴染のお民じゃねえか。
あれ、お民さん、まだ女房にしてんのか?物持ちがいいねえ。
それから七五朗の家へ行く。
お民に会い、昔話が出る。
飲んだ酒が旨かったが、しらふはいいが、酒を飲んだら虎狼の石松。
七五朗も気付いたが、もう遅い。
石松はへべれけ。
七五朗、お民に百両の無心に行かせる。
二つ返事で貸してくれたとお民が帰ってくる。
百両を石松に渡したが、石松は受け取らない。
都鳥に催促するんだと、止めるのも聞かずに飛び出してしまった。
酔っ払って都鳥の家に帰ると、三人の旅人が来ている。
藤枝長楽寺清兵衛の身内だというが、石松と藤枝の貸元は叔父甥の間柄。
お前らなんか見たこともない。偽りだ、お前らは。俺の名前は清水一家、遠州森の石松だぞ。
啖呵をきったと思うと奥へ入って横になって高いびき。
都鳥吉兵衛が旅人に謝るが、旅人はこれから夜旅をかけるという。
石松の言ったことは本当で、我々は偽り。元は保下田の久六の子分で、石松は敵。同座はできない。明日の朝、親分の敵を討つ。
すると吉兵衛は、俺は久六とは縁がある。きまりが悪いが石松から百両の借金があってまごまごしている。お前たちに助太刀をして、石松を斬ってしまおう。明日の暮六ツ頃、閻魔堂の中に隠れて待っていてくれ。俺が石松をおびき出すから、お前らは出てきて石松に斬りかかる。俺たちは石松に、助太刀をするぞと油断をさせて、後ろから斬ってしまう。
翌朝、目を覚まして昨夜の醜態を謝る石松に吉兵衛は、
まあいいやな。それより百両だけど、今晩返すぜ。
その夜、都鳥三兄弟と四天王の七人に連れられて石松が閻魔堂の前まで来ると、観音開きが左右に開いて、飛び出した三人の長脇差。
保下田の久六の子分だ、親分の敵、石松の命はもらったぞ。
保下田の久六は悪い奴だが、お前たちの親分なら仕様がない。俺が弱けりゃ討たれてやるが、俺が強いと返り討ちだ。
切り結んだ三人と石松。
都鳥一家が声を揃えて「石さん、助太刀をするぞ」。
油断をさせて石松の後ろから斬りつける。