石松三十石舟道中(清水次朗長伝)

石松三十石舟道中

舟の中で乗合衆の話を聞いている石松。
やくざ者に詳しい男が喋っていた。
東海道にはいい親分が揃ってるが、海道一図抜けた者がいない。
しかし五年たったら草津追分の見受山の鎌太郎が一番になるでしょう。

見受山鎌太郎、名前は聞いているが、会ったことがねえ。
帰りがけに寄ってみようと石松が独り言を言っていると、脇で寝ていた男が起き上がった。

五年経ったら海道一の親分ができる?
海道一の親分は今立派にあるじゃねえか。
駿河国が安倍郡清水港の宇土町に住む山本長五郎、通称清水次朗長、これが海道一の親分よ。

嬉しくなって石松、男を自分の席に呼ぶ。
次朗長ってのはそんなに偉いか?
次朗長くらい偉いのが二人とあってたまるかい。
飲みねぇ、飲みねぇ、鮨を食いねぇ、江戸っ子だってねぇ。
神田の生まれよ。

けど、次朗長ばかりが偉いんじゃない。いい子分がいるぜ、次朗長には。
飲みねぇ、飲みねぇ、鮨を食いねぇ、江戸っ子だってねぇ。
神田の生まれよ。

清水一家で強いのは誰だか知ってるかい?
そりゃ知ってらい。大政、小政、大瀬半五郎、増川仙右ヱ門、法印大五朗……。
おいおい、一人忘れていませんか?

石松と見受山鎌太郎

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