悩みについての話 Part 8
加藤:これね、一番大変なのは、相応しさってことなんですよ。これは理屈じゃないですから。阿川:相応しい
加藤:相応しい、はい。要するに、相応しさって判んないですよね、今日、こうしてお邪魔してますけど、なんとなくネクタイしてきますけど、これ僕がパジャマで来ても、要するにディレクターの方と約束したのは、何を約束したかというと、何時に来なさいと、何時頃までですと、ここの約束をしましたけれど、どういう服装で来いって約束してないですね
大竹:してないです
加藤:だから僕はタキシード着てもいいし、どてら着てきてもいい、パジャマでもいいわけですよ。それで何か言ったら、そんなこと何も約束してなかったじゃないか、自由だろ?
大竹:前ね、番組でSMの女王様を呼んだら、ネグリジェで来ちゃったことがあってね
阿川:こわ〜
大竹:もう怖かったです、やっぱり。
阿川:怖かったんですか?大竹さんでも?
大竹:ネクタイ締めろとは言わないけど、普通の服で来てほしかったですね
加藤:だから、相応しさっていうのは、個々の合意にだけじゃなく、あらかじめの合意なんですよ
大竹:そうですね
阿川:すいません、Tシャツで来ちゃって
加藤:いえいえ、Tシャツじゃなくて(笑)、あらかじめの合意が判んないんです。だから普通の社会生活が
大竹:それはもう、悩みの相談というよりか、精神の相談じゃないですか、だって
加藤:そうです。そういうことです
大竹:ねぇ。悩みじゃないですよね。
阿川:精神科の仕事ですよね
大竹:人とのバランスが取れないことだから
加藤:バランスが取れないことから、友達ができない、恋愛が上手くいかない、
大竹:社会性がない
加藤:人と接するのが嫌で引き篭もっちゃうと
阿川:そういう人は雑駁な言い方をするとあれですけど、昔に比べて増えてるんですか?
加藤:増えてます
阿川:激しく増えてますか?
加藤:激しく増えてます。
大竹:そういう人にはどうしたらいいんですか?
加藤:いや、どうしたらいいって、どうしようもないですよ。
大竹:どうしようもない
加藤:先ず第一に、増えてる
大竹:距離感の無い人に「お前は距離感が無いんだ」って言っても判らないですね
加藤:そうです。距離感そのものが解らない
大竹:距離感の意味が解んないんだから、距離感が無いんだって言われても、「何ですか、それ?」
阿川:歩く距離3メートル
加藤:最初に戻っちゃうんですけど、親子関係で距離感というものを掴むと、親子関係で近い距離感となると、こういうことは家で言ってもいいと、だけど、外で言っちゃいけないと、こういうことはおかあちゃんには言ってもいいと、だけど隣のおばちゃんにちょっと言っちゃマズイなと
大竹:友達同士はダサイ言葉で話しても平気だけど、上司に向かった時にはちゃんと話をする。それは全部距離感ですよね。
加藤:距離感ですね。で、最初の、一番近い距離感を体験しないから、遠い距離感とか解んないんですよ
阿川:ということは、やっぱり家族の中でそれはもう問題として
加藤:親子で一番、まぁ別に親じゃなくてもいいんですけど、誰か自分を育ててくれる、養育してくれる誰かと、近い距離を体験して、この人にはこんなこと言っていいと、だけど同じこんなことは人には言っちゃいけないと
大竹:僕たちの時代は、変な話ですけど、父親との距離感は他人のようにありましたけど、友人との関係は親密だった。だから、父親とのそんな深い距離感はできてないけど、人との距離感は、逆に、親と遠い分だけ、近い関係が友達とできて、社会に出て上司を見れば、まぁ親みたいなもんだから、関係が遠くなるって、そういう風な意味合いでの距離感は、僕たちは培ってきた
加藤:今の日本で、どこでここが崩れたかというと、上下関係です。上下関係は絶対無きゃいけない。これが崩れちゃった。これが基本です。だから人間関係が崩れてきちゃった
大竹:上下関係が崩れる要因は、能力主義ですか?
加藤:いや、能力主義もあるけれども、友達夫婦とかね、親子は友達のようにとか、これで全部
大竹:ニューファミリー
加藤:そうそう
大竹:田島洋子だ!
加藤:(笑)誰だか知らないけど、要するにこれも
阿川:お父さんが子供のことを「君(きみ)」と呼ぶようになってからおかしいと思ってるんですけど
加藤:あ、それは絶対そうです。だから学生、先生も、友達関係の生徒って、僕は絶対許さないです。全共闘の時にも、学生が話す時、「お前は学生でオレは教授だ。言い方を改めろ。それからだ」
大竹:上下関係できない人はダメですよね
加藤:あのね、教授と学生だって親しくなれるんです。親と子でも親しくなれるんです。夫婦でも親しくなれるんです。要するに、「関係が上下だから親しくなれない」という錯覚が出たんですね。だから、友達親子になっちゃったんです。
阿川:うーーん
加藤:親と子供で親しくなれるんです。先生と生徒で親しくなれるんです。友達は友達で親しくなれるんです。だから、何も友達との親しさと同じ親しさを
大竹:縦に持ち込むことはない。縦は縦の親しさがある
加藤:横は横の親しさがある
大竹:なるほど、それが無くなった