悩みについての話 Part 2
大竹: どういうことですか?家の矛盾っていう加藤: だから
大竹: 例えば
加藤: 喧嘩すると怒られるわけですよ
大竹: 「お前だ」と
加藤: 喧嘩すると怒られるもんですから、「喧嘩はいかん」。でも子供ってのは喧嘩することが健全な発達には必要だと思うんですが、「喧嘩はいかん」って言われますね。そうすると、もう僕はそのまま、兄貴との喧嘩になりそうになると、全部我慢しちゃう
阿川: 自分が折れれば平和にいくという風に思うんですね
加藤: そういうことです。全て折れることで物事を解決するっていうのが身についちゃうわけです
大竹: ヘンな話ですけど、こないだ兄弟で喧嘩して、お兄さんは暴れ者で、弟を刺して、弟は真面目で、それで今まで一身に暴力を受けてたけど、黙って我慢して学校に通ってた。学校では人気者だった。逆にお兄さんは、暴れるのはなぜかっていうと、学校では除け者にされてたその鬱憤を家で晴らしていた。弟に。言ってみれば、のこぎりこそ無いけれど、その弟のようなお立場で
加藤: そうです。その弟のような立場です
阿川: その鬱憤はどこに晴らしていらしたんですか?
加藤: その鬱憤を晴らせないから、おかしくなっちゃったんですけど
阿川: (笑)おかしく、おかしいんですか?(笑)
大竹: それはどういう、立派なご本をお書きになって、どこがおかしいんですか?(笑)心の中に入っていくようで失礼なんですが、どこで発散なさってたんですか?
加藤: 発散は一応ですね、学校で悪ガキだったですから学校のほうで発散してました
大竹: 学校では悪かったんですか
加藤: もう学校ではホントに悪くて
阿川: どれぐらい悪かったんですか?教室なんて抜け出しちゃって
加藤: もう教室なんて抜け出して、一人で抜け出すんじゃなくて、仲間連れて抜け出しましたからねぇ、そうすると先生が追っかけてくるわけですよ。駆け足はこっちのほうが速いですから逃げちゃいます。すると先生が自転車で追っかけてきたりしてね(笑)
阿川: 勉強しなかったんですか?
加藤: 勉強しないですね
阿川: それで東大入るんですかぁ?
大竹: だからもう頭のいい人は違うの
加藤: いや、ちがう・・・
大竹: 勉強しなくても入るの、東大は
阿川: ふーん、勉強しなくてもね。でも心はいろいろ寂しいことがあったり、腹が立つ事があったり
加藤: もうホントに寂しいですね。要するに、ホントに信頼できる人がいないわけですから
大竹: お母さんは?
加藤: あのねぇ、・・・なんか随分プライベートなことまで、ついつい引き込まれて話しちゃう(笑)
阿川: 今日は大竹まことの人生相談教室ですから
加藤: 母親はですね、割と無関心だったんですよ
大竹: 目の前で、お父さんに命令されたことをちゃんと受けてたり、兄弟にいじめられた時に謝ったりするのに
加藤: もう母親は割と無関心ですね。で、父親が過剰に関心持ってましたから、家に二人母親がいて、異常に関心が高い母親と、非常に関心が薄い母親と
大竹: が、諦三さんを見てらしたと
加藤: ええ
大竹: そのトラウマは、どのへんで
加藤: そのトラウマのために随分、だから、あの、二十代、辛い思いしましたね
阿川: 大反抗したことは無いんですか?
加藤: 大反抗・・・
阿川: お父さんにぶつかったり、喧嘩したり
加藤: そうそう。それをすれば、健全な若者になったと思うんですけれども、それが無かったですよね。全部言うこと聞いて「はいっ、はいっ、はいっ」
阿川: いくつくらいまで
加藤: 十代は完全にそうでしたし、二十代も、ホントかなり前半はそうでしたね
大竹: そんなことしたら、つきあってた女に当たったり殴ったりとか、てことはしないんですか?
阿川: するんですか?そういうもんなの?(笑)
大竹: いや、そうじゃなくて、そこまであったらば、普通は、一番自分に近しくつきあった女に、
阿川: さっきの弟みたいにね
大竹: そう、どっかで晴らすみたいのは、内在するじゃない、心の内に
加藤: あのね、それがね、もう徹頭徹尾従順を強いられましたから、人との関係では、従順であることでしか付き合えないという風に性格ができあげられちゃうんですね
大竹: 喧嘩したことない
加藤: 喧嘩したことは……、あ、ありますけども、あのそれでも
大竹: 従順ていうのは、社会の中でですか?
加藤: 社会の中での従順です。で、喧嘩する時はさっきの少年みたいにですね、もう、ホントにギリギリ、ギリギリもうこれ以上我慢できないってなって、喧嘩はしますけれども
大竹: じゃ、とっても性格的には真面目で
加藤: そう。だから真面目なのは非常に危険だってのはよく解るんです
阿川: じゃ楽しみは?例えば映画を観るとか、音楽を聴くとか
加藤: だから、楽しみがある人は健全なんですよ
大竹: 無いんですか?
加藤: 無いです。要するに父親が望む子供になりますから、父親が
大竹: お父さんが持ってる実像みたいなものに、自分を近づけよう、近づけよう
加藤: それしかないんです
阿川: 自分の達成感はどこに?
加藤: 達成感は無いです
大竹: だから父親の望みが自分の達成感と合致しちゃってる
阿川: 理想の息子になった時に達成する?
加藤: 要するにね、父親に褒められた時に満足する。普通は第一次反抗期があって、第二次反抗期があって、それで成長した人間になるんですけど