悩みについての話 Part 5
阿川:阿川佐和子と大竹まことの「とことんNIPPONウォッチャー」、今日は早稲田大学教授の加藤諦三さんにおいで戴いておりまして大竹:もう見出しを見ただけでも、素敵な言葉を
阿川:今度お出しになったご本が、「無名兵士の言葉」というご本なんですが、無名兵士が言葉を残してるわけですね
加藤:はい。南北戦争、アメリカで奴隷解放の、リンカーンがやって
阿川:ずいぶん古い話。「風と共に去りぬ」の頃
加藤:そうです。140年前ぐらいの話なんですが、その時に、南のほうですよね、あの、南北で戦って負けたのは南のほうですから、南の負けたほうの兵士が残した言葉というのが、ニューヨーク大学のリハビリセンターって僕は見たことないんですけど、そこに刻まれてるんだそうです
阿川:刻まれている
加藤:はい。どういうことが刻まれているかというと、言葉としては、
- 大きなことを成し遂げるために力を与えてほしいと神に求めたのに
謙遜を学ぶようにと弱さを授かった
偉大なことができるように健康を求めたのに
より良きことをするようにと病気を賜った
幸せになろうとして富を求めたのに
賢明であるようにと貧困を授かった
阿川:これ全部恨み言ですか?
加藤:いやいや、これが、最後もうひとつ
- 世の人々の称讃を得ようとして成功を求めたのに
得意にならないようにと失敗を授かった
求めたものは一つとして与えられなかったが
願いはすべて聞き届けられた
私はもっとも豊かに祝福されたのだ。
大竹:全部解るんですけど今のが解らない
阿川:あはははははは
大竹:最後のひとつが解らない
加藤:要するに求めたものって
大竹:自分の求めたもの
加藤:富を求めたのに、与えられなかった
大竹:健康を求めたけど、病気になった
加藤:成功を求めたけれど、与えられなかった
大竹:失敗しちゃった
加藤:うん。でも
大竹:求めたものは全て、何ひとつ与えられなかったが、「願い」ってどういうんですか?
加藤:いや、願いが叶ったっていうのは、幸せになろうと思って富を求めたんです。で、求めた富は得られなかった。
阿川:あ、そうか。幸せにはなったし、偉大なことができるようになったし、大きなことができるようになった。その方法として、偉大なことができるように健康を求めたけれど、偉大なことができるようになるためには、病気を賜ったことによって偉大なことができたんですね
加藤:要するに幸せになろうと富を求めたわけですね。だけど富を与えられなかったと。でも、願いは、っていうのは、幸せのほうは、なれた。なぜ幸せになれたかっていうと、賢明であることで幸せになれたと。
大竹:なるほど、なるほど。願いは聞き届けられたんだ。富は得られないけど聞き届けられたんだ。
加藤:だから、「私はもっとも祝福されたのだ」。だから、賞賛を得ようとして成功を求めたけど、成功は与えられなかったと。だけど、得意にならないように言われて、自分が得意にならなかった。得意にならないでいたら、周りの人が自分を認めてくれた
阿川:だけど先生、この最後の「求めたものは一つとして与えられなかったが、願いはすべて聞き届けられた」って、気がつくのは何歳ぐらいなんですか?(笑)これが九十歳だったら今までの九十年間苦しんでなくちゃいけないじゃないですか
加藤:あの、人間は最後の死ぬ時に、幸せか不幸かってすごい重大なことなんですよ
阿川:ふーーーーーーーん
大竹:そうだよな、そうだよ
阿川:そうだよ?
大竹:オレはもう、今、タックルに出てる政治家にもう、ひとつ送りつけてやりたいよ
阿川:これ、壁に貼っときましょうか
大竹:壁に貼っといて。ハマコーが何か怒鳴る度にこれ見せてやりたい
阿川:言いたいことがある時には、黙ることを与えられたとかね
加藤:要するにこれね、僕、南北戦争ってアメリカなんですけどね、これ見た時に読んだ時に、ああ、人間て、もう西洋も東洋もちがう、アメリカも日本もホントにちがう、もうホントにちがうんだけど、一番最後の「いかに生きるか」っていうことになると、結構似てくることがあるんだなと思ったのは、例えば仏教で、色即是空って言葉ありますよね、要するに形あるものは空だって言ってるんです。と、これ、同じなんですよ。あの般若信教の言ってることと。要するに、富を求めたってこれは形ですよ。形は空だよ。それをもう、日本の平家物語からね、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」、「奢れる者久しからず」なんですよ。
大竹:大きな家(うち)に幸せは無い!
加藤:奢れる者、権力を持って奢っていても、それは、久しからず、やがて
大竹:栄枯衰勢
加藤:栄枯衰勢、出てくると
大竹:堀江貴文をちょっと呼んできて
阿川:あはははははは
大竹:あいつに、1400億なんか持ったってしょうがないんだっていうことを、ちょっと教えてあげる